講演 私とロゴス腹話術

※会報誌23号 P4-5『講演 私とロゴス腹話術』より抜粋

春風とんぼ

笑顔

今日のお話のポイントは笑い、正確には笑顔です。私は薬品会社の営業を50年やってきました。営業マンが朝部屋に入って来た時顔をみると、家庭の状況がよくわかります。不思議なことに、笑顔と売り上げとは正比例します。部屋の中に入って笑顔がなかったら、「トイレ行って顔を見ていらっしゃい。」と言います。笑わせるために鏡に、「鏡よ、鏡、世界で一番きれいなのはだれ?」って言うとね、「あんただがね」って言われるでしょう。「その笑顔で病院に行きなさい。そうしたら、薬を買ってくれる」って言うんです。購入担当の薬局長は、やはり気持ちの良い方に顔を向けるじゃないの。そして柔らかい目線を合わせてにっこり笑顔を見せて弾む声で語り掛けると、相手は快く対応してくれますよ。

ちょっと自慢話になって恐縮ですが、ある病院でコードレスの心電計を10台いっぺんに入札するというので営業マンたちが行きました。ところが落札できませんでした。私に訪問要請があったので行きました。私が行ったとて落札できるわけがないの。ところがね、交渉中背中を叩く人がおるの。誰かな?振り向いたら院長だったの。「とんぼさん、何しているの?」私のこと加藤さんって言わないの。入札相手の管理部長がね、「院長、何で知っているんですか?」院長曰く「10年も腹話術でうちの病院に奉仕をしてくれている人。お前知らんのか?」それでね、「私の予算使いなさい」と言われ10台全部落札しちゃった。そんな腹話術のご利益がありました。

ある時ね、三重県の桑名にお人形抱えて行ったんです。そこの介護士が「この人は障害で反応がないけど、気にしないでね。」「ああ気にしません。」とやり取りしました。帰りのご挨拶をした時、頭がごつーんとぶつかっちゃったの。その方は大学の先生だったので「先生、ごめん」て言おうと思ったら、今まで何も聞いていないと思われていた人が、「かんちゃん、ごめん」って先に言ったの。もう2-3カ月も反応がなかった人ですよ。

もう一つ。お人形が目線を合わせて問いかけると、色々なことがあるんです。ある時、「1たす1は?」と聞くとカンちゃんは「ニ」、「2たす2は?」「ヨン」、「4たす4は?」「ハチ」「カンちゃん利口だね。8たす8は?」すると近くの可愛い女の子に、カンちゃんが「イクツ?」って聞くんです。そうしたら一番後ろにおって反応がないと言われていた自閉症の子が「そんなこと、自分で考えやー」って言ったんです。これにもびっくりしました。こういうことが皆さんの腹話術の生活にあるんじゃないでしょうか。それを土台にして次に進まれたら良いのではないですか。

ロゴスの腹話術をやる私たちは、何を求めてやっているんでしょう。「あなたは趣味があっていいねえ」と言われると、ものすごく腹が立つんです。趣味でやっとるんではない。ゴルフ、麻雀など誘われても一切やらなかった。「変わっている奴」とされました。60年も腹話術をやっとるの不思議ですよ。でも全く反応のない人が反応を起こすんです。私の卒論の指導をしてくれた教授とか、愛知県コロニーの副院長は、「加藤さん、100人の中で一人そういう良い反応があったらね、成功ですよ。それを堂々と論文にしてください」と言ってくれました。自閉症の勉強なんかしたくないと思うこともありましたが、そういう人たちの反応に接して良かったと思います。

 

台本作り

聖書の中にヨハネによる福音書があります。1章1節「初に言があった。言は神と共にあった。言は神であった」とあります。「初め」とはいつでしょう。新聞に宇宙についての記事がありました。私たちの住んでいる宇宙はいつ頃からあるかというと135億光年だって!わーっ。それは望遠鏡で眺めた宇宙の果てよりさらに遠くにあって何かふわふわするのが浮いているらしい。地球と同じものが浮いているのではないかという研究が沢山あるそうです。そういう話題も私たちの台本の中に生かされていけば、話は膨らんでいくんです。話は笑いだけでないのです。先程の春風模範演技では特殊詐欺のお話や神社のお話もありました。どういう言葉を入れていくと話が膨らんでいくのか考えます。

以前、桃太郎は鬼を退治する桃太郎だけではないということを聞いて私はびっくりしました。ある地域の町や村の一つひとつでは桃太郎の話は違うそうです。優しい桃太郎、怖い桃太郎、喧嘩する桃太郎もいるそうです。そういう話もあなたの創作台本のヒントになりませんか。お作りになったらどうですか。台本作った時にはルビを振って、人形操作が出来るようにしましょう。お手伝いします。

 

初に言があった

最後が一番大事なポイントです。「初に言があった。」この1か月くらいこれで眠れないの。「初め」っていつだろう?古事記の話でセクハラになるかもしれません。男の神様がこちらから、反対から来た女の神様が「まあいい男ね」と先に言っちゃった。二人を作った神さまは「女が先に何事だ。セクハラなことを言うな。」って言ったとか。

もう一つ。聖書に書かれています。旧約聖書の創世記の最初を読みますと、世の初めのどろどろのところなんです。人間が出来てからはね、男の人が寂しがり屋だから女の人を連れて来てくれたとされているアダムとエバの話です。初めの出合いの言葉が何だったか考えると夜も眠れないですよ。

考えれば考えるほど台本作りは楽しいですよ。いつも私が大事とお伝えしている笑顔、弾む声、優しいまなざしに加え、台本を書くこと、声を出して読むこと、そして推敲することをお勧めします。これらは私たちの頭を活性化します。「初に言があった。」考えてください。とにかく古事記も聖書も面白い。私は次から次に読むんです。言葉をふくらませるということは芸人たちもやっています。イチロー師匠も使われました。言葉には相手の心に入る物質もたくさんあります。そして相手が笑顔になった時、相互の幸せが生まれます。

笑顔の中には戦争はないと思います。私は戦災を受けて一歩間違えば孤児だった世代なので、特にそう思います。

どうか皆さんお一人おひとり健康にお過ごしになりますように。

お人形を嫌う前に、お人形にうとまれていませんか?あなたが一番関心があることは何ですか?先ほどの「趣味」ではなく、「使命としての生き方」と私は言いました。小難しいことを言って申し訳ありません。

コロナにかからないように、手を洗って、顔を洗って元気な笑顔でロゴス腹話術のご奉仕をしていただきたいと思います。