ロゴス腹話術の姿勢

当然誰でも知っていることですが、腹話術の発声法というのは、原則としては顎や唇や顔の筋肉を、少しも動かさないで出さなければなりません。

これは腹話術発声の原則です。

したがって私達が普通の話をする場合とちがって、これは一種の独特な発声法となる訳なんです。ですから腹話術は絶えざる練習をつみかさねる事によって御自分でこれを修得していただくよりほかに方法がないのです。

腹話術の修得には決してインスタントはありません。しっかり覚えてください。

それでは基本発声の姿勢をまず第一番に考えてみることにいたしましょうか。正しい姿勢は大切です。

あなたの正しい姿勢から、正しい発声が生まれるのですから、これを完全に修得するまでは誰が何といっても正しい基本姿勢はくずさないように常に心がけなければなりません。基本の正しい発声姿勢をもって練習につぐ練習によって、腹話術が自分のものになるのです。しかし出来るようになってもなお更に正しい姿勢で練習を続けることは大切なことです。姿勢には私は二つあると思います。一つは身体の姿勢、そしてもう一つは、私達の体を支える心の姿勢です。後者はとても大切な問題です。

発声のための体の姿勢を正しくすることは勿論必要ですが、まずそのはじめに心の姿勢を整えて正しく保つことはもっと大切です。そこでくどいようですがもう一度だけそのために私はあなたにキリスト教の信仰をお持ちになることをすすめるのです。平安、喜び、感謝、賛美といったような正しい心のハッキリとした姿勢が出来てこなければ、今日まで使用したことのない一寸無理にも見えるちがった特別な発声を続けるのですから必ずムリが出て来て声帯に支障をきたすようになってしまうでしょう。

ご存知のように、野球でも水泳でもそうですし、柔道でも空手でもみんな同じことですが、それをはじめる時の精神状態が練習効果を左右するのです。精神状態で結果がわかると言っても過言ではないでしょう。大げさな言い方だと思うかもしれませんが、そうではありません。本当にそうなのです。ですから発声のための体の姿勢を整える前に心の姿勢を整えるように致しましょう。

腹話術の心の姿勢:正しい心がまえさえ出来るならば、練習する時に少しは無理があっても永い時間続けることができるものです。その練習の効果は思ったより早く上がるものなのです。これは沢山の人の中から特殊な腹話術を自分のものにした人について見ていて言えることです。必ずブチあたる壁に向かった時に、のりこえるのは心の姿勢からです。必ず壁にブチあたるのです。心の姿勢を整えてください。

これを私の信じているキリスト教では祈りとでも言いましょうか。静かに落ち着いて、まあとにかく正常な平安な静かな心でこの練習をはじめましょう。とに角、正しい心の姿勢をとって下さい。

求めよ、そうすれば与えられるであろう(マタイによる福音書7章7節)

これはキリストの言葉です。

(春風イチロー著『腹話術入門』より)